製造業D社さま 製造業


パートさんのノートを、スマホのアプリへ。
製造業D社様が全3回の研修で始めた「自分の部署から作るAI活用」


背景|「遅かれ早かれ使う道具なら、早めに」

D社様は、オーダーメイドで箱(パッケージ)を製造されている企業です。2026年7月から8月にかけて、全3回のAI活用人材開発研修を対面で実施しました。

会社としてのAIへの向き合い方は、はっきりしています。営業の責任者でもある常務は、AIを、スマートフォンと同じように「これから使っていく道具」と位置づけています。

「スマホと一緒だし、携帯と一緒だし、遅かれ早かれ、絶対使っていかないといけないから。早めの方がいいんじゃない?って言って使うようにはしています」

一方で、社内の現状も率直に語られました。AIを使えている人より、まだ使えていない人の方が多い。その入り口にあるのは、便利そうだと分かっていても使い方が見えない、という壁です。

「便利なものだと思うけど、何をどうしたらいいかわかんない。っていうところが、多分入り口になってると思います」

研修は、この入り口を越えるための最初の一歩になりました。会社としてもChatGPTのビジネスプランを契約し、業務で使える環境を整えられています。


変化|受講した方が、自分の部署の業務からAIを使い始めました

お客様への文面づくり

EC(ネット販売)でお客様対応も担当されている方は、もともとパソコンに入っていたCopilotを使い、お客様へ送る文章をAIに整えてもらってから、自分で見直してお送りしていました。

研修では、プロンプト(AIへの指示文)の組み立て方を学びました。それまでざっくりとした文章で投げていたところを、学んだ型を入れて指示するようになっています。

「お客様の対応で文面考えるのには、かなり短縮はされてます」

以前は自分で二度三度と読み直し、打ち直していた時間が、AIに一度直してもらうことで短くなりました。商品企画のリサーチやアイデア出しでも、相談相手のようにAIを使われています。

在庫の記録を、ノートからスマホへ

同じ方がいま取り組まれているのが、部署で管理している在庫の記録です。

これまでは、パートさんが使った商品をノートに書き、担当の方が帰り際にそれを受け取って、自分のパソコンのExcelに入力していました。ノートに書く段階で、商品番号の書き間違いや記入漏れが起きることもありました。

そこで、Excelで管理していた表をGoogleスプレッドシートに作り直し、パートさんがスマホから入力できるアプリの試作版を作られました。

「パートさんに、そのスマホの画面を見てもらって、もっと文字大きい方がいいとか、こういう機能があった方がいいっていうのを相談しながら」

作って終わりにせず、実際に使う人の声を聞きながら改良を重ねている段階です。大まかな流れはできており、次は商品を登録して実際に使ってみる予定です。

これまで目指している形
パートさんがノートに記入パートさんがスマホから入力
担当の方が帰り際にExcelへ入力入力した内容がそのまま表に入る
商品番号の書き間違い・記入漏れ入力の段階でミスを減らす

契約書の確認

総務部の方は、研修前はAIをほとんど使っていなかったそうです。研修を受けてから、AIに質問することが増えました。

なかでも手応えを感じられているのが、取引基本契約書などの内容確認です。これまでは何ページもある書面を、最初から全部読んで確認していました。

「データでポンと入れてしまえば、懸念点とか気をつけるところはありますかっていうことを言えば、バーっと出してくれるので、そこはかなり時間短縮になりますね」

何ページも読み込む前に、AIに注意点を挙げてもらう。 確認の進め方そのものが変わりました。


意識の変化|「何をどうすればいいか分からない」から「まず一度触ってみる」へ

1. AIに触れたことのない方も、一度は使ってみました

常務によると、研修の前は、AIを触ったことのない方が半分以上いたのではないかとのことです。研修をきっかけに一度は全員に使ってもらったことで、便利だと感じた方は増えたのではないかと話されています。

「全員一回はこう入れてみてっていうことで、入れることによって便利だなっていうことは感じた」

便利さを感じた方とまだ感じていない方の両方がいる、というのが今の率直な状況です。それでも、触ったことがない状態から一度使ってみた状態へ、社内の出発点が一段上がりました。

2. 「AI」という言葉が、社内の日常に入ってきました

常務は、朝礼などの場でもAIの話を繰り返し伝えるようにしています。研修のあと、社員の皆様がAIという言葉に触れ、意識する機会が増えました。会社の方針と、受講した方の取り組みが、同じ方向を向き始めています。


今後の展望

部署ごとに、次に取り組みたいテーマが具体的に挙がっています。

部署これから取り組みたいこと
営業話すだけで残せる日報、その場で作れる報告書
営業・企画・業務見積・製造票・仕様書づくりで、部署をまたぐ入力をつなぐ
EC(ネット販売)在庫記録のアプリと、社内の在庫管理システムとの連携
総務有給の確認など、よく聞かれる質問に答えるボット

営業 ── 話すだけで残る日報と報告書

営業では、日報を書かず、口頭で報告して済ませることが多くありました。それではデータとして残っていきません。常務が描いているのは、自分に報告するくらいの気軽さで記録が残る形です。

「本当に僕に報告するぐらいの感じでできるような日報を作って、データとして貯めていく」

あわせて、ものづくりの現場で起きたことの報告書も、その場で会話するように作れる仕組みを考えられています。

見積・製造票 ── 部署をまたぐ入力をつなぐ

「ものすごい時間がかかる」と話されたのが、見積や製造票、そのもとになる仕様書の作成です。常務の感覚では、営業の1日の業務のうち2時間ほどをここに使っています。

仕様は営業がお客様との打ち合わせで固め、企画部がExcelに書き起こし、営業が値段を記入し、業務部がそれを手で入力し直す。同じ内容が、部署をまたいで何度も入力されています。

「将来的には全部つなげて、それぞれ行くような形になるのが一番いいかな、とは思ってます」

常務は、ここが短くなれば、その分をお客様のもとへ行って話す時間に使えるのではないかと考えられています。

EC ── 社内の在庫管理システムとつなぐ

在庫記録のアプリは、いずれ社内の在庫管理システムともつなぎたいと考えられています。スマホで商品の管理番号を選び、その日に在庫から引いた分を入力すれば、会社のシステムの在庫にも反映される形です。つなぐときの安全性も含めて、進め方を検討されている段階です。

次の一歩

受講したメンバーで月に一度集まろう、という話も社内で出ています。一方で、どこから手をつけるかの整理は、これからだと話されました。

「どの部署もそうだと思うんですけど、まず何からやっていくかとか、そういったことがまだできてないところもまだ全然ありますね」

部署ごとに芽が出始めた取り組みを、どの順番で、どう会社全体へ広げていくか。D社様の次のステップは、その道筋を描くところにあります。