株式会社秀幸さま 食品製造
名刺を読み取るアプリ。5つの工場の残業を集計するアプリ。商品パッケージのラフ。
いずれも研修のあとに社内で生まれ、すでに実際の業務で動いています。パッケージにいたっては、そのまま商品化されて店頭に並びました。
全3回の研修が残したのは、ツールの操作方法ではありません。「これはできないか」と思いついたときに、外へ相談する前に自分たちで試してみるという順番でした。
背景|「プログラムは、専門の業者に頼むもの」でした
2026年5月から7月にかけて、全3回のAI活用人材開発研修を対面で実施し、4名の皆様が受講されました。
もともと社内システムをご自身たちで構築されており、ITへの距離は近い会社です。それでも、仕組みを作る話になると前提は決まっていました。
「プログラムを組むというのは、専門の業者さんにお願いするような感覚だった」
作りたいものがあっても、費用と時間を見積もってから相談する。その一段を越えるかどうかで、多くのアイデアが止まっていました。
変化|「これできないか」から、動くものが出てくるようになりました
社内アプリを自分たちで作る ── 名刺管理と、5工場の残業集計
もっとも手応えが語られたのが、社内アプリの内製です。
名刺管理アプリは、名刺を撮影して内容を読み取るところまでを社内で作られました。市販の名刺管理サービスの導入を検討されていた最中のことです。
| 検討していたこと | 実際にどうなったか |
|---|---|
| 名刺管理ソフトを契約するか | ランニングコストを考え、社内で作ることにした |
| 既存データをどう移すか | ひな形のExcelに流し込めば、これまでのデータもそのまま生きる形にした |
残業集計のアプリは、もっと切実な課題からでした。工場は5拠点あり、定時で上がる分には問題ありませんが、残業が発生するとどの工場のどのラインで何時までかかったのかを集計する必要があります。これを総務経理部の担当者が、ほぼ手計算でまとめていました。
作られたアプリでは、誰が何時まで働いたかをその日のうちに記録でき、期間を指定してCSVでまとめて出力できます。集計という工程そのものが消えました。
「これはできないか、ということに対して、ハードルがだいぶ低くなった」
社内から「こういうアプリが欲しい」と相談が来ることもあれば、こちらから「こういうものを作りました」と出すこともある。両方向で動き始めている状態です。
商品パッケージ ── ラフから、実際に売られる袋へ
食品の商品を扱われている中で、パッケージのデザインにもAIを使われました。
これまでは、袋を作る会社のデザイナーがラフ案を上げてくださるところから始まっていました。現在は社内でラフを作り、それをもとに展開していく形に変わっています。
そして、この進め方で作られたパッケージは、そのまま商品化されて販売されています。社内の検討資料にとどまらず、お客様の手元に届くところまで届きました。
多言語のマニュアル
海外出身の従業員の方が多く働かれているため、社内マニュアルの多言語化が課題でした。
現在は、日本語のマニュアルさえ作れば、そこからすぐに各言語へ展開できる状態になっています。社内研修の資料も、これまでは日本語のみでしたが、言語別に配布できるようになりました。
「ベースのマニュアルを作りさえすれば、そこからすぐに各言語へ展開できる」
品質監査と原価分析
国際的な品質規格の監査を受ける立場にあるため、その要項をAIに読み込ませ、要項に沿った文書の作成や、準備中の内容が指摘事項にあたらないかの確認に使われています。
原価の分析では、社内システムからCSVで出力したデータをAIに渡し、長期間の推移を分析させて判断材料にされています。
営業の資料づくりが、自走し始めました
研修を受けた営業の方々は、提案資料や商談資料をご自身で作られるようになりました。
「社内に『作ってくれ』と言っていたものを、自分で作れるようになった」
依頼して待つ時間がなくなり、その分だけ着手が早くなります。メーカーから届いた資料の精査をAIに任せる使い方も生まれています。
全員で取り組んだテーマ
| テーマ | 内容 |
|---|---|
| 社外文書の作成 | 会社として使用を認めており、社内に広く浸透 |
| 提案・商談資料 | 営業がそれぞれ自分で作成 |
| 市場動向・決算書の分析 | 同業他社の動向把握 |
| ツールの使い分け | 用途によって複数のAIを併用。デザインは別のツールと組み合わせ |
意識の変化|「頼むもの」から「まず作ってみるもの」へ
1. 作る前に外へ相談する、という順番が変わりました
以前は、仕組みを作るとなれば専門の業者への相談が前提でした。今は、まず社内で試作して使い勝手を確かめ、そのうえで判断する順番になっています。
2. ランニングコストが判断の軸になりました
外部のサービスを契約すれば毎月の費用が発生します。社内で作れるものは作る、という選択肢が現実的に持てるようになりました。
3. 考える時間そのものが短くなりました
「2〜3時間考えているようなものも、希望を伝えれで10分ほどで形になる」
時間の削減だけでなく、思いついたその日に試せることが変化の中身です。試せる回数が増えれば、当たる確率も上がります。
4. 現場の困りごとが、そのまま形になります
残業集計も名刺管理も、困っている人がいる業務から生まれました。ツールに業務を合わせるのではなく、業務に合わせて作れる状態になっています。
今後の展望
基幹システムとの連携 ── 残っているのは、ここだけ
「やってみたけれど難しかったこと」を伺うと、返ってきたのは一点だけでした。
「大体のことはできてしまっているのですが、基幹システムと連携させるとなると、単純にAIだけでは難しい」
社内で作れるものは作れるようになった。だからこそ、社内だけでは作りきれない境目がはっきり見えている状態です。
FAXで届く発注書 ── 1日100〜200枚をどう捉くか
受注書をAIに読み取らせ、最終的に自動入力するところまでを構想されています。1枚であれば問題なく読み取れることも確認ずみです。
「1枚の受注書であれば普通に読んでくれる。これが1日100〜200枚来るものをどうするかは、やり方を考えなければいけない」
枚数が増えたときの処理をどう組むか。ここが次の分かれ目になっています。
受講した人が、教える側になる
研修を受けた方が、その内容をもとに社内で研修を行う計画が立っています。日程はこれからですが、使える人を増やす段階に入りつつあります。
現在の活用は、一部の方が牽引している状態です。ここから全社へ広げていくために、社内で教え合う形をどう作るかが次のテーマになります。