建設業A社さま 建設業(土木・不動産)
数百枚の資料を読み比べる、申請書類を仕上げる、収支を一覧にする。
研修から3か月あまりが経ち、A社様では「AIに聞く」から一歩進んで、人が読みきれない量の資料をAIに読み比べてもらう使い方が生まれていました。
全3回の研修が残したのは、ツールの操作方法ではなく「何を任せて、何を人がやるか」の線引きでした。
背景|「便利そう」から「業務のどこで使うか」を探す段階でした
2026年4月から5月にかけて、全3回のAI活用人材開発研修を対面で実施し、4名の皆様が受講されました。
研修では、Google Workspace上で使える生成AI(Gemini)を軸に、文章作成、資料づくり、画像生成、業務ごとに特化したAI(Gem)の作り方まで扱いました。
研修前は、AIを日常業務で使う場面がまだ限られていました。そこから3か月あまりが経ち、社内では実際に業務で使う方が生まれています。特に印象的だったのは、「AIに聞く」ではなく「人が読みきれない量をAIに読み比べてもらう」という使い方まで広がっていたことです。
変化|「幅広く使う人」が生まれました
何百枚のテキストを読み比べる ── 試験対策カリキュラムの作成
今回のインタビューで、最も手応えが語られたのが人材育成の場面でした。
A社様では、海外出身の社員の方が在留資格の上位区分の試験に挑戦されています。1年前に外部の試験対策講座とテキストを購入されていましたが、本番で出題される内容との違いを社員の方から指摘される場面があり、その内容を確かめる必要が出ていました。
ここでAIが力を発揮します。購入したテキストと、試験の主催者が公開している資料の両方をPDFで読み込ませ、「どこがどう違うのか」「どちらのテキストをどう使えば合格に近づくか」を分析させたところ、精度の高い比較と対策カリキュラムが返ってきました。
「私は全部読み込むことができないので、すごく役立ちました」
「カリキュラムの組み方が素晴らしいなと思いました」
資料は両方あわせて何百枚という分量です。人が全部を読んで比べるには時間がかかりすぎる作業を、AIが引き受けられます。この一件は、社内でのAI活用の位置づけを一段引き上げるものになりました。
申請書類の作成 ── 「どうやって作ったんですか」と聞かれた完成度
助成金・補助金の申請にあたって、外部の専門家の先生から申請内容の文章作成を求められた際にも、AIを活用されました。
「すごく完成度が高いものができたかなと思っています」
提出後、先生から「どうやって作ったんですか」と聞かれたそうです。専門家が読んで完成度を評価する水準の文章が、社内で作れる状態になっています。
不動産業務の資料づくり ── 収支の一覧化
不動産の仕入れ業務でも活用が進んでいます。検討中の案件について収支を一覧にまとめる作業は、AIが得意とする領域でした。
「収支を一覧にしてくださいっていうのは、すごく綺麗に作ってくれたので便利でしたね」
このほか、連絡が取りづらい相手への文書作成など、表現に気を配る必要がある文章でもAIを壁打ち相手として使われています。書類作成の多い業務ほど、効果が出やすい領域です。
現場・事務それぞれの使い方 ── メール、型番照会、画像づくり
他の受講者の方にも、それぞれの職種に合った使い方が生まれています。
| 場面 | 活用の内容 |
|---|---|
| メール対応 | 返信文の作成、文章の添削 |
| 商品情報の照会 | 商品番号から重量を調べる、型番からどんな商品かを出す |
| 現場写真の資料 | 写真に載せる工事黒板のイラスト作成 |
| 新システムの導入 | 新しく導入するシステムの使い方を、細かく説明してもらう |
新システムの操作については、マニュアルを人に聞く前にAIに聞いて理解できる状態になりました。導入時の立ち上がりを、自分たちのペースで進められます。
海外出身社員の学びを支える ── 翻訳と専門用語
2026年7月に入社された海外出身の社員2名にも、会社のアカウントを渡してAIを使える状態にされています。利用履歴を見ると、翻訳や、日本人社員に聞いても分からなかった専門用語を詳しく調べた形跡が残っていました。
言葉の壁がある中でも、分からないことをその場で自分で調べられる手段があることは、現場での立ち上がりを助けます。
ツールの使い分けが生まれました
研修ではGeminiを軸に扱いましたが、その後は目的に合わせてツールを選ぶ使い方に進化しています。
| 用途 | 選ばれているツール |
|---|---|
| 画像の作成(工事黒板のイラストなど) | Gemini |
| 文章の説明・深掘り | ChatGPT(「次の質問の投げ方もうまい」) |
| 資料の読み込み・比較 | 両方で試して比べる |
| 表・データの整理 | スプレッドシートとの組み合わせ |
「具体的に分かりやすく説明してくれるかなという感じはしました」
同じ作業を複数のAIで試して、出てくるものを比べたうえで選ばれています。ツールに使い方を合わせるのではなく、目的に合うものを選べる状態になりました。
意識の変化|「AIに聞く」から「AIに読ませる・比べさせる」へ
1. 人が読みきれない量を任せられると分かりました
数百枚の資料を読み比べることや、2つの教材の違いを分析することなど、これまでは時間の都合で着手できなかった作業が、AIに任せられる作業になりました。作業時間の短縮というより、これまで手を付けられなかったことができるようになったという変化です。
2. 目的に合わせてツールを選べるようになりました
画像はこちら、説明はこちら、表の整理はスプレッドシートと、用途ごとに使い分けが進んでいます。研修で扱ったツールにとどまらず、自分で試して比べる姿勢が定着しています。
3. 得意なこと・まだ難しいことの線引きができました
土地の区割り図面の作成のように、AIに任せるにはまだ難しい領域も見えてきました。線引きが分かることで、任せる作業と人が行う作業を迷わず振り分けられるようになります。これは実際に手を動かした人だけが得られる感覚です。
4. 時間短縮だけでなく、判断の精度に価値があります
試験対策の教材比較は、「早くなった」以上に「これまで確かめられなかったことを確かめられた」ことに価値があります。申請書類も同じで、専門家に評価される水準まで社内で作れることが成果になっています。
今後の展望
社内への広がり ── 鍵は「直接聞ける場」
現在は数名の方が日常的に活用されている段階です。ここからさらに広げていくために、ご担当者様が挙げてくださったのが「直接会って聞ける場」の価値でした。
「直接聞けるのと、オンラインでいつでも聞けるから連絡してねっていうのでは、全然みんなの意識が違うのかなと思っているんですよ」
オンラインでいつでも質問できる体制はあっても、その場に人がいて聞ける状況とでは、社員の方の受け止め方が変わります。KANNONでは、近隣への訪問予定に合わせてお立ち寄りするなど、直接お会いする機会を作っていきます。
職種ごとの使い方を見つける
一人がAIを使いこなせるようになっても、職種が違えば求めるものも変わります。
「同じ職種であればこういう使い方ができるよって伝えられるんですけど、施工管理とか、それぞれ求めているものが違うと思うので」
施工管理、事務・経理、海外出身の社員と、部門ごとに必要な使い方は異なります。それぞれの職種で「これに使える」という一つ目の成功例を作ることが、社内に広げる近道になります。ここはKANNON側から具体例をお持ちして、一緒に見つけていく領域です。
業務そのものの仕組み化
施工管理の担当者の方からは、施工計画書を作れる仕組みが欲しいという声が挙がっているそうです。一度きりの作業ではなく、毎回同じ手順で使える仕組みとして残す段階に入りつつあります。
「私はGeminiを使えって強制するものではないと思っているので。ただ、上手く使えばいいのになって思うことは多々あるんです」
強制ではなく、使いたくなる状態をどう作るかが次のテーマです。研修で「AIで何ができるか」は見えました。次は、それぞれの職種で「自分の仕事はこう変わる」と実感できる場面を増やしていく段階です。