株式会社オリエント総業さま 製造業
研修から4ヶ月。社内では、採用メールの作成、総務業務チャットボット、面接評価の整理、提案資料づくり、現場の啓発ポスターまで、AIが日常業務の中に入っています。
代表ご自身が製品紹介動画のサンプルを作って関係者に共有し、会議をまるごと録音して文字起こし・要約する社員も出てきました。
一方で、次の課題もはっきり見えています。「個人の効率化」から「部門の仕組み」へ。オリエント総業様は、いまその境目に立っておられます。
背景|規程づくりの相談相手から、日常業務の効率化へ
2026年4月から5月にかけて、全3回のAI活用人材開発研修を対面で実施しました。
研修前からChatGPTはお使いでしたが、使い方の中心は「新しいものを生み出す」ことでした。
「こういう規程を作りたい、こういうルールを作りたい。うちの会社規模や業種だとどんなものが妥当ですかね、と相談しながら作る。それがメインの使い方でした」
研修を経て変わったのは、日常的に発生する定型業務にもAIを当てられるようになったことです。
変化|それぞれの業務で、活用が立ち上がりました
採用メールと、総務業務チャットボット
研修の中で、採用メールの作成と、総務業務チャットボットを実際に作られました。
「研修を経てプラスアルファで作れましたので、通常業務というか、日常的に発生する業務に対して効率化していくという方法でも使えるようになった」
何かあった時に総務としてどう対処すればいいか「AIが教えてくれる」状態を作る。チャットボットは、その第一歩になっています。
面接評価の整理
面接で聞いた内容のメモをもとに、評価をAIに整理してもらう使い方もされています。応募者の方へのご配慮から録音まではされていませんが、メモを起点に一定の基準で評価を組み立てる形が回り始めています。
提案資料と、お客様からの調べもの
「提案ツールとか、お客さんからちょっと調べといてって言われたところを調べて資料化するとか、そういったところでもうガッツリ使っている」
啓発ポスターで「伝えられる幅」が広がりました
ヘルメットの着用や整理整頓を呼びかける、現場の啓発ポスター。以前は、Excelにイラストを貼り付けて文字を入れる形で作られていました。
いまは、正しいかぶり方を「顎紐もしっかりつけて」とイラストで示し、「こんなかぶり方はダメですよ」という悪い例まで並べて見せられます。
「伝えられる幅は、もうかなり広がっていますよね。ポスター1枚でも」
作成時間が短くなっただけではありません。同じ1枚で伝えられる情報の質そのものが上がったことが、現場での手応えになっています。
経営層がご自身で動き始めました
もともと「もっと業務にAIを活用してほしい」というお考えをお持ちだった代表は、研修後、ご自身で製品紹介動画のサンプルを作って関係者に共有しました。
「社長の目線は変わっていますね」
社内の空気|「これ、ジェミニに聞いてみたんです」
研修を受けられたのは一部の方で、一般社員の多くは未受講です。それでも、社内の空気は少しずつ動いています。
「何か資料を見せるときに、これChatGPTに相談して作ったんだ、とできるだけ言うようにするんです。そうするとそれを聞いた人は、そういう便利な使い方ができるんだ、こんな資料を作れるんだ、という意識が生まれてくる」
打ち合わせをしていると、『これはちょっとジェミニに聞いてみたんです』と言い始めたりはしている」
「会社の雰囲気が大きく変わったということではないですけれど、ある程度、AIに抵抗なく自分でも使ってみようかなというレベルまでにはなってきているのかな」
研修で「音声で入力する」方法を学んだことをきっかけに、会議をまるごと録音して文字起こしし、要約させている社員も出てきました。研修でお渡しした一つの技術が、社内で別の使い方に育っています。
いま見えている課題|個人の効率化から、部門の仕組みへ
1. 部門としての業務フローには、まだ手が届いていません
「今はやっぱり、個々で自分の仕事に対して効率化を図っているという段階なので、部門として持っている業務のフローを変えてでも効率化する、生産性を上げるというところまでは、まだちょっと至っていない」
研修が生んだ「個人が使える状態」の次に、部門単位で業務フローそのものを組み替える段階が待っています。
2. アカウントを揃えることが先だと考えておられます
有料のChatGPTアカウントは、研修にご参加いただいた方々で共有し、1アカウントを複数名で使う形で運用されています。
「部門に1つぐらいまでは、少なくとも増やさなきゃいけないかなと思う」
「まずやっぱりアカウントをちょっと揃えないと、広げてはいけないかなというところですね」
無料のまま業務で使うことのリスクも含め、広げる前にルールと環境を整えるという順序で考えておられます。
3. 属人化と、引き継ぎのリスク
最も強く語られたのが、この論点でした。
「ある人が非常に有効なツールをChatGPTやClaudeで作りましたと。そのまま辞めてしまったよ、特に何の引き継ぎもなく辞めてしまったよ、というときに——」
「一部の方だけが非常に有効に使って、会社にも影響力があるようなアプリとかを作った場合のリスクもあるんじゃないのかな、というのはちょっと思っています」
積極的に使っているのが特定の方に限られている状態では、その方に業務が集中するリスクと、辞められたときに誰も引き継げないリスクが同時に生まれます。
4. 「AIでできる」が増えると、仕事の範囲も広がります
これは、他の企業様からはあまり出てこない視点でした。
採用専用のウェブサイトを作ろうと業者と話を進めていたところ、「ホームページもAIで作れるらしいよ」という話を代表が聞いてこられたそうです。
「本来は業者に頼んでいた、専門の方に頼んでいたものを自分たちでやってね、となるということは、やっぱり業務範囲は広がっていく。そういうところでの負担というのは、いずれかかってくるのかな」
AIによって「できること」が増えた分、これまで外に出していた仕事が社内に戻ってくる。全員が使える状態であれば分担できますが、使えるのが特定の方だけであれば、その方に集中します。AI活用が進んだ会社だからこそ見えてくる課題です。
今後の展望|分断された業務フローを、一本の線に
社内には、業務ごとに別々のシステムが存在しています。
| 工程 | 使っているもの |
|---|---|
| 機械の図面を描く(機械1台で数千枚) | CADソフト |
| その図面を発注依頼する | 生産管理システム |
| 売上を管理する | 生産管理システム |
| 最終的な経理処理 | 会計ソフト |
「いくつかのシステムを介するということがあって、そこがスムーズにいかないかな、というのは非常に思っているんですね」
「その流れを一本化したいというのは、非常にあります」
システムとシステムの間を人が毎回介在してつないでいる状態をどう解消するか。既存のツールを入れ替えるのではなく、いま使われているものを活かしたまま、その間をつないでいく。
「仕組みの間で動くということですよね」
研修によって「AIで何ができるか」は社内で具体的に見えるようになりました。次のステップは、それを個人の工夫ではなく、会社の仕組みにしていくことです。