株式会社テイサクさま 製造業


研修後、社内では複数のテーマが同時に動き始めました。
社内ポータルの情報をAIで参照する仕組み、約180ファイルの部品表を横断して検索する仕組み、手順書を一覧から見つけられるようにする仕組み。

いずれも受講された方ご自身の手で進められているものです。そしてそれぞれが独立したままではなく、部署をまたいで一つの土台につながり始めています。全3回の研修が生んだのは「AIを使える人」ではなく、「社内で使える形にする人」でした。


背景|個人での活用から、社内への展開へ

2026年4月から5月にかけて、全3回のAI活用人材開発研修を対面で実施しました。

研修前から、ChatGPTを個人的に使われている方はいらっしゃいました。研修後に論点となったのは、それをどう社内へ展開するかです。

社内ではポータルサイトとして全社共通の情報基盤を運用されており、そこに蓄積された情報をAIで参照したいという要望が、社内で最も多く挙がっていました。

研修から約4か月。現在は複数の部署で別々のテーマが同時に動いており、そのいくつかは部署をまたいで一つの仕組みにつながり始めています。


変化|いくつものテーマが、同時に動き始めました

社内ポータルの情報をAIで参照する

社内ポータルに蓄積された文書をAIで参照する仕組みづくりが進んでいます。

生成AIでも実現は可能でしたが、機密性を含めて検討した結果、既存の社内環境と同じ基盤の上で動くAIアシスタント機能が選ばれました。ポータル内のドキュメントに質問をして回答が返ってくるところまでは、すでに動いています。

進め方で特徴的なのは、最初から全社に広げていない点です。

「限られた人間でライセンスを購入して、展開できればいいかなと考えています」

従量課金という選択肢もありましたが、使い始めの時期は質問が増えやすく、費用が読みにくくなります。そこで現在は2ライセンスのみを購入し、2名でどこまでできるかを確かめている段階です。

進め方内容
最初の単位2ライセンスで開始
確かめることポータル内の情報をどこまで参照できるか
次の単位部署ごとに広げながら、使い方を模索する

小さく始めて確かめてから広げる。この順番が、そのまま全社展開の設計になっています。

手順書を「見つけられる」形にする

工作機械のプログラムについて、記述が文法的に正しいかをチェックする専用のAIが作成され、現場でも使ってもらえるように展開されました。手順書を作る際には、写真から不要なものを消したりイラスト化したりといった画像加工にも活用されています。調べものについても、検索の代わりにAIへ聞くことが日常になりました。

そのうえで挙がったのが、手順書そのものの届き方です。

「手順書は作ってあるのですが、紙だと存在が分からない」

あることに気づかれないまま作業が進んでしまう。この点に対して、手順書を一覧できるWebページにしてリンクから開ける形が、ご自身の手で作られました。そのためのコーディングは、AIとやり取りしながら進められています。

「AIで作業を速くする」だけでなく、「作ったものが現場に届く形にする」ところまで手をかけられている点が、この取り組みの特徴です。

180ファイルの部品表を、横断して探せるように

製品の部品表は約180ファイルにのぼります。長く続いてきた歴史がある分、フォーマットも書式もそれぞれです。他の部署の方も、「この部品はどの機種で使われているのか」「この製品のこの部品の品番は何か」といった検索を日常的にされています。

これまでは、必要な複数のファイルを各自でダウンロードし、手元で結合してから検索する形が取られていました。

選ばれたのは、専用のシステムを導入する方法ではありませんでした。社内ポータルに部品表を格納するフォルダを用意して、そのフォルダ全体をAIで横断検索するという進め方です。

得られること内容
検索用ファイルの作成各部署で個別に用意する必要がなくなる
ダウンロード結合のための持ち出しを減らせる
費用専用システムを導入せずに実現できる

現在の論点は、AIへの伝え方です。

「いろいろな書式があるので、A列の1行目が何を意味しているのかを教えてあげないと動いてくれない」

書式がそろっていない表をAIに理解してもらうには、列や行の意味を先に渡す必要があります。ここを整えていくことが、そのまま検索の精度につながっていきます。

部署をまたいで、一つの土台に

3つのテーマは、それぞれ独立して始まったものです。ただし、整えられている情報基盤の上に、部品表の検索が乗る形になっています。

テーマつながっている先
ポータル内の情報をAIで参照する全社の土台
部品表の横断検索その基盤の上に構築
プログラムのチェック、手順書の一覧化現場での活用

一人ひとりが使えるようになったことが、部署をまたいだ一つの仕組みに育ち始めています。


意識の変化|「AIを使う」から「社内で使える形にする」へ

研修後の変化は、個人の作業が速くなったことだけではありませんでした。

1. 自分が使うものから、社内に渡すものになりました

作られたプログラムチェック用のAIは、ご自身のためだけのものではなく、現場の方に使ってもらう前提で作られています。手順書の一覧化も同じです。「自分ができる」から「他の人ができる」へ、作るものの向きが変わりました。

2. 「探す」ことそのものを設計の対象にしました

部品表の検索も、手順書の一覧化も、ポータル内の参照も、共通しているのは必要な情報にたどり着くまでの道のりを設計していることです。作業を速くするのではなく、探す工程そのものを仕組みで解こうとされています。

3. 安全に使える形を、先に考えるようになりました

生成AIでも実現できる場面で、機密性を踏まえて社内環境と同じ基盤のAIが選ばれました。部品表の検索も、ダウンロードを減らせることが利点の一つに挙がっています。使い方を広げる前に、安全に使える形を決めるという順番が定着しています。

4. 小さく始めて、確かめてから広げる形になりました

2ライセンスでのスタート、部署ごとの展開、現場に配ってから反応を見る。いずれも、一度に全社へ広げるのではなく、確かめながら進める形が取られています。この進め方は、AI以外の取り組みにも応用できる資産です。


今後の展望

全社への広がり ── 「使う人の幅を広げる」

パソコンを日常的に使われる部署では、AIに触れている方が多くなっています。若い世代の方は、伝えなくても自発的に使い始めている状況です。

一方で、デスクワーク以外の現場の方や、パソコンを積極的に使ってこられた経験が多くない方にも広げていく余地があります。この点についてはすでに、社内でフォローしていく体制を作ろうという声が挙がっています

実務への接続 ── 「触れている」から「使っている」へ

技術に関わる部署では、生成AIに触れている方は多い状況です。次の段階は、それを実際の業務にどう生かすかです。部品表の取り組みは、まさにその最初の一手にあたります。

手を動かす仕事の効率化

営業をはじめとする部署では、手作業・手入力のルーティン業務が残っている状況です。この領域の効率化に向けて、すでに別途調査が進められています。

「社内のコスト削減について、何かできないかという目標を考えていて、その中の一つです」

AIの活用と、業務そのものの自動化。この2つをどう組み合わせるかが、次のテーマになっています。